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はじめてみよう!接着ブリッジ~前歯部欠損に対する接着ブリッジの可能性~/大谷一紀先生

2021年8月31日(火)

大谷歯科クリニック院長の大谷一紀先生に、「はじめてみよう!接着ブリッジ~前歯部欠損に対する接着ブリッジの可能性~」というテーマでご講演いただきました。

はじめに

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前歯部が1本欠損した患者さんにどのような治療計画を立案しコンサルテーションを行いますか?
義歯というのは少し現実的ではないので、基本的にはブリッジかインプラントの選択肢が考えられるのではないでしょうか。ただ、ブリッジは隣在歯を切削する必要があります。インプラントではその必要はありませんが、外科処置が必要となります。

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歯科医師の立場で考えると健全なエナメル質を切削することには誰しも多少なりとも抵抗感があると思います。しかし患者の立場で考えると、外科処置を伴うインプラントに対しても抵抗感を覚える人は多いようです。そういった場合に接着ブリッジという治療オプションを引き出しに持っておくことは、患者と良好な関係を維持しながら治療を進めるために有効です。

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インプラントは万能か

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2004年のPjetursson BEらのレビューでは、インプラントの5年生存率は95.4%、10年生存率も92.8%と高い数字である一方で、5年後に合併症が全くなかったのは61.3%と、インプラントが治療オプションであることが分かる一方で、決して完璧、万能とまではいかないこともうかがえます。

2006年のRoss-Janskerらによるとインプラント周囲炎の発症率は10年で12~43%とインプラント周囲炎による問題もあります。もちろんインプラントよりブリッジや接着ブリッジが優れているというわけではありませんが、やはり治療オプションは多く持っておいたほうがよさそうですね。

接着ブリッジを検討すべき症例

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接着ブリッジを検討すべき症例は、エナメル質が十分に残存しており、かつ以下のいずれかに当てはまる場合です。

〇外科処置ができない
・適正年齢に達していない
・全身疾患ほか身体的理由
・恐怖感

〇歯の切削に抵抗がある
〇治療期間、回数、費用に制約がある

接着ブリッジの予後

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2008年のPjetursson BEらのレビューでは接着ブリッジの5年生存率は87.7%と報告されています。その失敗のほとんどは脱落です。決して極めて高い成功率とは言えませんが、脱落した場合は再装着すればよいので失敗に対するリカバリーが容易だということがいえます。比較的新しい論文である2018年のJunyu Chenらのレビューでも、接着ブリッジの5年生存率は91.2%と比較的高い数字が報告されています。

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接着ブリッジのデザイン

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接着ブリッジのデザインについてはどうでしょうか。一般的なブリッジでは欠損部の両側を支台とすることが基本となりますが、接着ブリッジでは片側のみを支台とするシングルリテーナーのほうが意外なことに予後が良いようです。Matthias Kは接着ブリッジの5年生存率を比較し、2リテーナーでは73.9%だったのに対し、シングルリテーナーでは92.3%であったことを報告しています。

マテリアルと接着操作

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大谷先生は接着ブリッジのマテリアルはほとんどのケースでジルコニアを選択するそうです。その審美性はもちろんですが、強度が高いため連結部の破折が少なく、リテーナー部も薄くできることに加え、最近では接着性についても証明されていることがその理由だそうです。フレームに用いるべきジルコニアマテリアルや、接着操作についても詳しく解説していただきました。

支台歯形成およびテンポラリーの扱い

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支台歯形成ですが、わずかな量に留めます。全く形成しないとセット時に補綴物がどこにおさまるのかがわからなくなってしまうため、フィニッシュラインとマージンの照らし合わせができる程度の切削はしたほうがよいとのことでした。ミリング可能な程度の浅くて滑らかなホールを形成することも多いそうです。

またテンポラリーについてですが、ポンティック部の基底面形態をオベイトにするためテンポラリーの基底面をコンポジットレジンで調整して粘膜面をコントロールするとのことでした。

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セットと咬合調整

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シングルリテーナーの接着ブリッジにおいて咬合調整で気を付けるべきことについても解説していただきました。ポンティック部にかかる力が連結部から遠ければ遠いほど、てこの原理でリテーナーを支台歯から剥がすような力がより強くかかってしまいます。そのためポンティック部に咬合接触をさせる場合は、連結部に近い部分にあたるように調整する必要があるとのことでした。

おわりに

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前歯部接着ブリッジはインプラントや従来型ブリッジのどちらも望まない患者に有効な治療オプションになりそうです。ただ、経験がないと具体的な方法がわからず手が出しづらいといった先生方も多いのではないでしょうか。スペシャル動画のなかでは、実際の臨床動画を交えてかなり具体的な内容まで細かく解説していただいています。

接着ブリッジをこれからはじめる、またはすでにしたことがあるけどなかなかうまくいかないと思っていらっしゃる先生方におすすめの内容になっています。最後の質疑応答も非常に充実した内容になっており、日常臨床における疑問の解決の一助になるかと思います。是非ご覧ください。

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