【人気動画】歯周組織再生療法~マイクロサージェリーによる進化~(垂直性骨欠損編)
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山口歯科医院院長の山口文誉先生に、「歯周組織再生療法~マイクロサージェリーによる進化~(垂直性骨欠損編)」というテーマでご講演いただきました。
はじめに
![1](https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/uploads/column_image/image/2005/fb6d8cdd-76a2-4686-b4e0-9b9831086c94.png)
歯周外科手術は、これまで切除療法を中心に100年以上の歴史をかけて進化してきました。しかし、切除療法は骨切除に伴う歯肉退縮や、知覚過敏、審美性や発語などの問題で徐々に適応症が限られるようになってきました。
一方、歯周組織再生療法はその適応症が以前よりかなり明確になってきており、歯周組織再生療法に影響を及ぼす因子なども整理されてきました。歯周組織再生療法に用いられる材料のバリエーションも増えてきており、なによりもマイクロサージェリーの進化により歯周組織再生療法の成功率は劇的に向上してきています。
今回は歯周組織再生療法のメインターゲットでもある垂直性骨欠損への対応について解説していただきました。
垂直性骨欠損の問題点
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そもそもなぜ垂直性骨欠損が問題となるのでしょうか。
1991年にPapapanou NPらは、骨縁下欠損の深さが10年後の歯の喪失リスクに与える影響について報告しています。その報告によると、骨縁下欠損が深くなるほど歯の喪失リスクが上がり、骨縁下欠損の深さが4.5mm以上ではおよそ7割の歯が10年後に喪失するとされています。
そのため、垂直性骨欠損に対して歯周組織再生療法などを用いて骨レベルの平坦化を図っておくことは、長期的に歯を保存するために有利にはたらきます。
Primary closure(一次閉鎖)の重要性
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歯周組織再生療法を成功させるためには、切開部のprimary closureを達成し、歯間乳頭部歯肉を保存することが重要です。創が裂開してしまうと歯周組織再生療法を成功に導くことが困難になるばかりか、リカバリーも非常に難しくなります。
さまざまなフラップデザインや術式が考案され、primary closureの達成率はその進歩とともに向上しています。特にマイクロサージェリーによる影響は非常に大きいです。高拡大視野だからこそ可能になる低侵襲なフラップデザインも考案され、MIST、M-MISTと進化は続いています。
歯間乳頭部歯肉の血液供給
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歯間乳頭部歯肉の扱いの難しさは、血液供給の少なさが影響しています。歯周組織への血液供給は、①歯槽骨の骨膜上の血管②歯槽骨内の血管③歯根膜の血管に依存しています。このうち最も血液供給が豊富なのは③の歯根膜の血管です。歯間乳頭部歯肉では歯根膜との距離が離れることにより、血液供給の点では不利な環境にあるのです。
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骨縁下欠損があると歯周外科時にはそこをデブライドメントして空洞化するため、歯間乳頭部歯肉への血液供給はさらに少なくなります。また、頬舌側歯肉の血管は歯間乳頭部でほとんど吻合していないなど、血液供給を得るうえで歯間乳頭部歯肉はかなり不利な条件であることがわかります。
つまり歯周組織再生療法を成功に導くためには、テクニック的に最も難しい歯間乳頭部歯肉のprimary closureを達成することが重要であり、そのためには歯間乳頭部歯肉によりよい血液供給が得られるような切開やフラップデザインで治療に臨む必要があるのです。
マイクロサージェリーの有用性
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マイクロサージェリーはその点でも非常に有利です。
CTGを用いた根面被覆術のデータですが、2005年のBurkhardt Rらの論文ではマイクロサージェリー群と肉眼で手術を行った群をCTGに対する血液供給のリカバリーについて比較しています。
その結果、マイクロサージェリー群のほうが血液供給のリカバリーが豊富であったことを報告しています。マイクロスコープを用いることで、侵襲の少ないアプローチや精度の高いデブライドメントができるというメリットがありますが、切開や縫合時など軟組織を丁寧に扱えることで血液供給の点でも優位になります。
さまざまなフラップデザイン
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近年ではMISTやM-MISTに加えて、EPPTやNIPSA、M-VISTAなど新しいフラップデザインも考案されています。歯間乳頭部歯肉の切断、離断を一切しないという非常に理にかなったフラップデザインになっています。
CTの有用性
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しかし、低侵襲なフラップデザインはその適応症をしっかりと見極める必要があります。低侵襲なフラップデザインに固執するばかりに視野が悪くなりデブライドメントが不十分になってしまっては本末転倒です。
術前に垂直性骨欠損の範囲をしっかり把握し、適切なフラップデザインでアプローチすることが求められます。そのために有用なのがCTです。CTは被ばく量の問題から頻繁に撮影すべきものではありませんが、歯周組織再生療法においては切開線やフラップデザインの考案に役立つ有益な情報を与えてくれます。
歯周基本治療後の再評価の適切なタイミング
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歯周外科を行なうか否かを判断する歯周基本治療後の再評価はいつがよいのでしょうか。再評価のタイミングが早すぎるとオーバートリートメントになりかねませんし、遅すぎると歯周病がさらに進行してしまうかもしれません。山口先生は文献的考察から基本的には3か月、最低でも1か月の治癒期間を置いてから再評価を行なうことを推奨されました。
おわりに
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このコラムでご紹介した内容以外にも、スペシャル動画の中では山口先生オリジナル切開デザインのTICITを用いたオペ動画や、山口先生が実際に行なっている歯周組織再生療法の事前準備と術後管理などの体系的なシステム構築の紹介など見どころの詰まったものとなっています。
マイクロインスツルメントの紹介や、手術におけるマイクロの扱い方、オペのときに気を付けるべきポイントなど臨床に直結するエッセンスも豊富に盛り込まれています。
歯周組織再生療法にこれからチャレンジしていきたい、もしくはステップアップをはかりたい先生方に非常に参考になる内容となっておりますので是非ご覧ください。