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”失敗しないために” 歯内療法のトラブル&リカバリー (全8回)

このシリーズでは、経験豊富なドクターより、トラブルシューティングや、そもそものトラブルを起こさないための予防法・抑えておきたい基礎知識をご紹介いただきます。根管治療専門のドクターである、吉岡デンタルオフィス 院長 吉岡隆知先生より、エンド治療時に関するトラブル&リカバリーを症例ベースでご教授頂きました。

  • 根管治療中のファイル破折への対処法 06:16

    症例は62歳女性、上顎右側第一小臼歯の根管治療です。
     
    歯が欠けて近医を受診したところ、根管治療不能を宣告されたことを主訴に来院。
    疼痛などの症状やfIstelはありません。
    デンタルやCTにて、頬側・口蓋側2根がS字状に湾曲、頬側根に石灰化様硬化像が認められます。
     
    この症例では、S字状根管にファイルが追随出来るのか、石灰化した頬側根管にファイルが穿通出来るのかが課題になります。
     
    根管治療を始めると、すでに歯髄はほぼ失活しています。
    ゲーツグリデンドリル(=歯科用根管口拡大ドリル)を入れる前に、ファイルが入るか確認する過程で、#35のKファイルを根管に挿入したところ、ファイルが中に折れこんでしまいました。
     
    さて、破折ファイルの除去方法を見てみましょう。
    破折ファイルの周囲にゲーツグリデンドリル等でスペースを作り、そのスペースに超音波チップを入れて、超音波の振動を使って、反時計回りに回転させて除去します。
    詳しくは、分かりやすい模式図を動画でご覧下さい。
     
    この方法で、比較的簡単に破折ファイルを除去出来ました。
    その際、他の根管に除去したファイルが落ち込まないようにする工夫を動画で見てみましょう。
     
    その後は通法通り、特に問題なく根管治療を終えます。
     
    症例の考察では、ファイル破折の原因・その状況、除去した方法、ファイル除去作業が増えたことで治療時間や回数の増加が無かったことをまとめています。
     
    患者様にはこの事を画像で説明しています。
    この際、自分が焦ってしまうと患者様も不安になるので、冷静に状況をお伝えする事が大切だ、と吉岡先生は仰っています。
     
    歯科医師であれば必ず遭遇するファイル破折とその除去方法、ぜひご視聴ください。

  • パーフォレーションリペア 05:50

    症例は67歳男性、上顎左側大臼歯部の根管治療です。
     
    ブリッジを装着したばかりで激しい痛みが出現したため、再根管治療を依頼されました。
     
    ブリッジを外さず第一大臼歯、第二大臼歯に根管治療を開始しました。
    CTにて、第一大臼歯近心根及び分岐部に骨欠損が認められます。
    髄腔開拡をしていくと、髄床底のレジン充填がすぐ取れてしまい、その下はパーフォレーションしていました。
    その日はパーフォレーション部に水酸化カルシウムを貼薬して一旦閉じ、日を置いて、パーフォレーションリペアを行います。
     
    パーフォレーションリペアの図式を動画で確認しましょう。
    穿孔部下の肉芽にテルプラグ等の吸収性の止血剤をプラガーで押し込み、上に適切な充填材を置きます。
     
    1・2年前の論文で、MTAセメントでのパーフォレーションリペアは予後が悪い事を受けて、
    吉岡先生はMTAセメントを使わず、CR充填をしているそうです。
    先生が愛用されているCRチップとレジンも紹介していますので、参考にしてください。
    CRチップ30GとマジェスティESローフローを使えば、顕微鏡下で確実に充填する事が出来ます。
     
    実際にパーフォレーションリペアを行いましたが、確認のデンタルでは、残念ながらブリッジに阻まれて写っていませんでした。
    その後は通法どおり根管治療を行い、近心根のイスムスを頼りにMB2を発見しましたので、そちらも根管治療をします。
    穿孔封鎖後、根管形成・根管充填でCR充填は簡単に外れませんでした。
     
    パーフォレーションは、根管治療中に1度や2度は経験するものですが、正しく精密なパーフォレーションリペアを行えば怖いものではありません。
    是非ご視聴ください。

  • フェルールが無い歯への根管治療 05:13

    症例は54歳女性、上顎左側第三大臼歯、ブリッジ支台歯の再根管治療です。
     
    左上第一大臼歯及び第二大臼歯欠損、左上第一小臼歯から第三大臼歯、5歯にわたるブリッジの支台歯となる歯が患歯です。
    患歯は根管治療済でしたが、口蓋側に瘻孔があり、CTにて口蓋根周囲に骨欠損が認められます。
     
    ブリッジを除去してみると、二次う蝕で歯質がなく、歯肉が被って歯根が見えない状態で、
    電気メスで被覆歯肉を切除する必要がありました。
    フェルール(=歯冠補綴のフィニッシュラインから健康な支台歯残存歯質を抱え込む部分)がほとんどなく、髄床底も薄くなってしまい、根管治療を終えても歯を残せるかが怪しい状況です。
    ラバーダムは周囲歯肉にかけてやっと出来る様な、かなり条件の悪い歯でした。
    厳しい条件の歯にラバーダムしている様子は、動画でご覧下さい。
     
    フェルールがない歯は原則抜歯がスタンダードですが、患歯を抜歯してしまうと、左上第一大臼歯、第二大臼歯の欠損補綴が難しくなってしまうため、患者様の強い希望もあり、根管治療を開始しました。
     
    患者様に予後不良をお伝えしつつ、通法通り根管治療を行い、瘻孔が消えた事を確認、根管充塡後、支台築造をして紹介先に戻し、補綴してもらいました。
     
    その後、いつダメになるか心配しながら、10年経過しました。
    かなり状態が悪い患歯でしたが、10年残せたのなら、責任は果たせたのではないでしょうか。
     
    考察では、10年後の最終補綴の写真を見ることが出来ますが、患歯のプラークコントロールが悪いものの、良好な予後であると言えるでしょう。
     
    フェルールがない歯の治療は、まず根管治療のためのラバーダムが大変ですが、この動画を見ると、条件が悪くてもトライしてみようと思えます。
    ぜひご視聴ください。

  • 根管口のレッジへの対処法 06:52

    根管治療において根管口のレッジの扱いと形成には注意する必要があります。

    早速ですが、患者概要です。
    53歳の女性、患歯は上顎左側第二大臼歯、「歯茎が腫れている」を主訴に来院されました。
    口蓋側に瘻孔あり、デンタルにて、近心根に根尖病巣が認められます。
    CTにて、上顎第二大臼歯に時々認められる、近心頬側根が口蓋側まで大きく広がっている形状をしています。
    近心頬側根はMB1とMB2の2根、MB2は未処置で根管治療がされていません。
     
    根管治療を開始すると、口蓋根・遠心根・MB1は元々閉塞しているので通法通りの根管治療、MB2は、根管は見えるのですが、途中でファイルが当たってしまい、入っていきません。
    よく見ると、根管口の遠心にレッジが出来ています。
     
    原因は、根管が根管口付近で湾曲し、遠心からでないとファイルが入らない方向に向いている事でした。
    遠心からのアクセスですと、遠心歯冠歯質もありますし、第二大臼歯遠心にタービン等の器具も入るスペースもないので、プレカーブを付けたり、遠心歯冠歯質を削合する事が出来ません。
     
    さて、MB2にファイルを入れるには、根管口を近心側に広げる必要がありますが、タービン等では大きすぎて入らないので、超音波チップを使用して根管口の上の部分を削合していきます。
    根管の湾曲方向とは反対側に広げることでファイルを入れやすくする訳です。
    #35のファイルが根管口に入るのを確認して、ゲーツグリデンドリルで広げて、近心からもファイルが入りやすくします。
    #15で穿通を確認、クラウンダウン法で根管形成を終了しました。
    尚、遠心側のレッジはそのまま残しています。
     
    根管治療中にレッジが出来てしまった経験を持つ先生は沢山いらっしゃると思います。
    この動画を視聴して、レッジ解消の方法をしっかり学びましょう。

  • 原因歯不明の急患対応|あなたならどう診断する? 10:12

    患歯がどこか分からない疼痛を主訴に来院する急患がいた場合、患歯特定に困難を極める事がありますが、症状や状況を一つ一つ根気よく紐解いていけば、患歯特定に繋がります。経緯を元に状況を整理してみましょう。

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    症例は61歳女性、原因歯不明の急性症状です。 2024年3月に急患で来院されました。
    過去、2021年4月に吉岡デンタルオフィスにて上顎右上第二大臼歯(右上7番)の治療が終了しています。

    以下は他院での治療経過です。
    2023年に右上がしみることから、知覚過敏処置を受けた後、ワクチン接種を期に原因歯が分からない位の激痛になり、右上7番の再根管治療を受けるものの、改善が見られません。続いて右上6番の抜髄となりましたが、痛みは変わらず腫れもでてきました。
    そこで、右上7番が抜歯されましたが、歯肉の腫れが引かないため、医院を替え、吉岡デンタルオフィスを受診されました。

    途中、耳鼻科を受診し上顎洞炎の疑いでCTの必要性を指摘されていますが、歯科医院でCTを撮影しています。
    因みに、抜歯された右上7番は、3年前に吉岡先生が根管治療した歯です。
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    さて、皆さまはここまでの経緯を視聴して、この状況が分かりますか?
    これが分かれば、エンドの急患対応に自信を持って良いと言えます。

    原因歯不明

  • フレアアップの原因を考える 10:58

    症例は72歳男性(歯科医師)、右上第一大臼歯の根管治療です。
     
    1週間前から熱いものがしみることを主訴に来院、口腔内写真からかなりの咬耗が認められます。
    第一大臼歯の遠心に自院スタッフに充填してもらったCR充填があり、第二大臼歯はインプラントが入っていました。
    CTから、口蓋根はほぼまっすぐですが、遠心にう蝕とCR充填あり、遠心頬側根根尖が口蓋側に湾曲しています。
    近心頬側根は2根、MB1とMB2があり、MB2中央辺りに側枝があります。
     
    根管治療を始めると、失活していて急性根尖性歯周炎になっていたようです。
    遠心根、口蓋根、MB1を穿通させ、MB2探索中に時間切れ、途中で終了しました。
     
    ところが、フレアアップして抗菌薬や鎮痛剤が効かない程の疼痛が出てきてしまいました。
    開くと頬側根から排膿が認められましたので、MB2を穿通させますが、フレアアップは治りません。
    因みに、湾曲の強い根管形成のコツを解説していますので動画をご覧下さい。
     
    そこで、他の原因と考えられる今度は髄床底の2次う蝕を処置します。
    口蓋根管から遠心・頬側に向かって2次う蝕があり、う蝕検知液を使用して除去し、CR充填をしていきます。
     
    CR充填後のデンタルにて、フレアアップの原因がはっきりしました。
    動画で確認しましょう。
     
    さて、根管内のう蝕除去は通常のダイヤモンドバーでは困難ですので、先生が愛用されているバーを紹介しています。
    また、CR充填も、精密な作業のしやすいCRチップも紹介していますので、参考にしてください。
     
    考察では、根管治療中に起こったフレアアップについて、原因と考えられるものを1つ1つ取り除いた末、見事にフレアアップを治めました。
     
    根気よく精密な治療の様をぜひご視聴ください。

  • 根管治療中に瘻孔が出現した時の対処法 06:50

    症例は57歳男性、下顎右側第二大臼歯の根管治療です。
     
    他院にて、自発痛が出たためIn一部を除去してCRしましたが、痛みが変わらず、紹介元に転院したところ、Inと軟化象牙質除去後、亀裂が発見されたため紹介されました。生活反応はありませんでした。
     
    デンタルとCTでは、樋状根を呈しているのが分かります。
    樋状根では、近心根・遠心根・頬側根が主要な根管であることが多く、この症例では、根尖で交差して一根管になっているため、根管充塡が難しい事が予想できます。
     
    根管治療を開始すると、既に失活しています。
    まずは根管の位置を確認、充分に髄腔開拡をして根管形成をします。
    2回目の根管治療では、フレアアップが起きて頬側に瘻孔が出現しました。
    超音波を使った充分な根管洗浄と根管内吸引洗浄を行い、投薬で消炎、咬合調整で対応して、3回目には瘻孔は消えました。
     
    咬合調整をする理由は、炎症を起こした歯は挺出してくるためです。そのため、まずは外傷性咬合になっていないか確認が必要です。
    なかなか瘻孔が消えない場合に、根管通過法の様に生理食塩水等で洗浄する事も有効です。
    開放など、特別な事はしない方が良いと思います。
     
    今回行った根管充填法のマッチドコーンテクニックは、根管拡大したNi-Tiファイルと同径のガッタパーチャポイントと、微膨張性のシーラー(ここではYOSHIDAのバイオシーシーラーを使用)で行う根管充填法です。
    従来の加圧根管充填法よりも簡単で封鎖性が高いと言われています。
    術後デンタルやCTにて、樋状根でも緊密な根管充填が出来ていることが分かります。
     
    考察では、治療説明を充分にして、患者様が納得されたら治療を行うのが良いと先生は仰っていました。
    根管治療の集大成であるこの動画をぜひご視聴ください。

  • 治療完了後の咬合痛への対処法 07:28

    54歳男性、下顎左側第二大臼歯の根管治療です。
     
    違和感がある事を主訴に来院、デンタルにて近心に破折ファイルを認めます。
     
    根管治療を開始し、築造セメントや異物除去後、MB根に破折ファイルを確認します。
    これは比較的簡単に除去出来ました。
     
    さて、除去確認後、デンタルで根尖付近にガッタパーチャが残っていることが分かりました。
    ML根が根尖付近で湾曲している内側に残っている根充材をできる限りで除去、取れないものはそのまま残して終了します。
    その後、紹介元で補綴物を入れますが、咬合痛が残ってしまいました。
    ただ、デンタルにて根尖部透過像は確実に小さくなっていますので、根管治療は成功していると考えます。
     
    考察では、根管治療後半年たっても咬合痛(チョコレートをかじると痛む)があるが、しばらく咬んでいると慣れている事、根尖部透過像は消失している事から、根管治療が原因ではない可能性があると考えます。
    この場合、根管治療の観点からは治療は成功していて、出来ることはありませんので、経過観察となります。
     
    患者様に経過観察をお伝えする前に、歯頸部歯肉にプロービングの痛みはないか確認します。
    これは歯肉磨きをしている方に疼痛が出る事があるためです。
    また、筋筋膜痛(口腔内から咬筋をつまんで確認する)がないかも確認します。
    筋筋膜痛があると、関連痛で歯痛が出る場合があります。
    ただし、筋筋膜痛には具体的な治療法はありません。
     
    患者様に説明する際、根管治療完了後の痛みは、解消するまでに数年かかる事もあると付け加えておきましょう。
     
    根管治療が完了しても疼痛が残ると、真っ先に再根管治療を検討してしまいますが、広い視野を持ち、他に原因がないかしっかり分析する事が重要です。
    是非ご視聴ください。

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