【人気動画】感染根管治療・Retreatmentの勘所/阿部修先生
目次
ガッタパーチャの完全除去は可能か
再根管治療の成功率
ステンレス製ハンドファイルとNiTiロータリーファイルについて
ステンレス製ハンドファイルの問題点
おわりに
ガッタパーチャの完全除去は可能か
再根管治療となるとまずガッタパーチャの除去が難しいですよね。
阿部先生はまず、ガッタパーチャの除去についての論文を提示されました。
Monquilhottら(2016)やHammadら(2008)によると再根管治療におけるガッタパーチャの残存率は0.02~43.9%であるとのことです。
また、2017年のGiampieroらのレビューによると、大多数の研究で10%未満のガッタパーチャが再根管治療をしても残存するとされています。
これらのことから、阿部先生はガッタパーチャの完全除去は不可能に近いと述べられました。
再根管治療の成功率
再根管治療の難しさを数字で見てみましょう。
これまで発表されてきた論文でも、再根管治療では初回の根管治療より成功率が低いことが示されています。
再根管治療の成功率に関する論文は上のようにさまざまなものがありますが、阿部先生はその中で2004年に発表されたGorniらの論文をピックアップされました。
この論文によると再根管治療において、解剖学的根管形態が維持されている症例では治療の成功率が86.8%なのに対し、解剖学的根管形態が喪失されている症例では47%とかなり低くなっています。
つまり、根管治療の際にはオリジナルの根管形態をなるべく壊さないように形成していくことが重要ということですね。
ステンレス製ハンドファイルとNiTiロータリーファイルについて
阿部先生はそのことに関連して、ステンレス製ハンドファイルについても考察されました。
NiTiと比べてステンレス製のファイルは硬く柔軟性に乏しいです。
いくらエンドの達人といえども、達人がステンレス製のファイルを握った瞬間にファイルがぐにゃぐにゃに柔らかくはなりませんよね。
物性の壁は絶対に超えられないと阿部先生は述べられました。
グライドパスにハンドファイルをしっかり併用することを前提としたうえで、NiTiロータリーファイルの有効性についてご説明されました。
ステンレス製ハンドファイルの問題点
①デブリの根尖孔からの溢出
根管拡大を行うと根尖孔からデブリが多少なりとも溢出しますが、ハンドファイルとロータリーファイルではその量が違います。
Huang Xらによるとハンドファイルのみで根管拡大を行うとNiTiロータリーファイルのみで行った場合より2~2.5倍のデブリの溢出があったそうです。
デブリの根尖溢出はフレアアップなど、術後の不快症状につながるリスクがあります。
ロータリーファイルは、回転応力によりデブリを歯冠側に引き上げる力が加わっているのでデブリの溢出量が少なく済むようです。
②クラックの発生頻度
CarlosらによるとNiTiロータリーファイルよりハンドファイルの方がApical root crackが引き起こされやすい傾向があったとのことです。
この論文のなかでは15番のハンドファイルが根尖から1㎜出ただけでクラックが入ったとの報告もあったそうです。
③術後疼痛の発生
Arias Aらによると、NiTiロータリーファイルよりもハンドファイルの方が有意に術後疼痛の出現率が高いとのことです。
ただし、術後疼痛が出た場合はNiTiロータリーファイルを使用した症例の方が、ハンドファイルを使用した症例よりも有意に術後疼痛が長引くということがあわせて報告されています。
④解剖学的根管形態への影響
Elio Beruttiらは、S状根管を模した模型に対し、専門医とGPがそれぞれNiTiグライドパスファイルとステンレス製ハンドファイルを用いてグライドパス形成を行うという研究を行いました。
その結果、ステンレス製ハンドファイルを用いた場合、専門医でも根管の直線化が見られました。
また、NiTiグライドパスファイルを用いた場合はGPでも根管形態を尊重したグライドパス形成が可能でした。
解剖学的根管形態を維持した根管形成は治療成績を向上させることから、やはりNiTiロータリーファイルは有効であると阿部先生は述べられました。
おわりに
また、NiTiグライドパスファイルを用いた場合はGPでも根管形態を尊重したグライドパス形成が可能でした。
解剖学的根管形態を維持した根管形成は治療成績を向上させることから、やはりNiTiロータリーファイルは有効であると阿部先生は述べられました。
再根管治療が必要となる原因は感染源、つまり細菌の残存です。
バイオフィルムを形成した細菌に対し最も有効なのは機械的根管清掃であり、それに加えて化学的根管清掃を行うことで大きな役割を果たします。
感染源の除去という基本的な処置が最も重要であり、最も難しいのかもしれません。
それをいかに検出し、除去できるかが治療の勘所であると阿部先生は結ばれました。
実際のスペシャル動画のなかでは、さらに多くの文献を紐解き再根管治療の勘所について細かく解説されています。
Post removal systemを用いたポスト除去の臨床動画や、CTを利用した診断や治療介入の意思決定についてなど、見どころの多い内容となっています。
是非ご覧ください。