【LIVE配信】三橋晃先生クリニカル・カンファレンス《参加レポート》
目次
はじめに
ガッタバーチャ除去
解剖学的要因
MB2の見つけ方
穿孔症例
おわりに
はじめに
根管治療を行なっているのに、患者さんの不快症状がなかなか改善しなくて困った経験をお持ちの先生は少なくないのではないでしょうか。
いわゆるエンドの難症例に対してのリトリートメントについて鎌倉デンタルクリニックの三橋晃先生にご講演いただきました。
内容を一部抜粋してご紹介させていただきます。
ガッタバーチャ除去
リトリートメントでは、まず補綴物の除去、ポストやコアの除去、そしてガッタパーチャの除去が必要になるケースがほとんどだと思います。
そのなかでもガッタパーチャがすべて取り去れたかどうかは歯科用マイクロスコープなどの拡大機器を導入し、確認しなければ難しいと述べられました。
ガッタパーチャ除去の方法についてです。
溶解剤を用いることが長年スタンダードとされてきた感がありますが、溶解剤を用いると感染源となったガッタパーチャが溶解し、側枝、分枝そしてフィンやイスムスに入り込み、かえって完全な除去を困難にしてしまうため溶解剤の使用は極力避けるようにとのことでした。
ではどうすればよいのでしょうか。
三橋先生はガッタパーチャ除去の方法として、マイクロスコープ下でGPリムーバースピアーやエンドホルダーなどを用いた方法をご紹介されました。
なかでも超音波チップを使用した方法を特にお勧めされており、ご自身の臨床のなかでは超音波チップのみで除去するケースも多いと述べられました。
解剖学的要因
難症例になってしまう要因のなかには歯の解剖学的要因もあります。
上顎第一大臼歯のMB2の見落としや下顎第二大臼歯の樋状根などが代表的と言えるのではないでしょうか。
上顎第一大臼歯のMB2出現率を調査した論文は世界中に多くありますが、今回は日本人のMB2出現率を示す恩田先生の論文を示されました。
それによると日本人のMB2出現率は約60%とのことでした。
下顎第二大臼歯の樋状根出現率については鈴木先生らの論文を引用されました。
それによると日本人の樋状根出現率は男性で40%弱、女性で50%強とのことでした。
女性では半数以上が樋状根というのは驚きですね。
MB2の見つけ方
上顎第一大臼歯のMB2を見つける方法についても解説がありました。
① まずMB1とPを線で結びます(黄色の線)
② その線に対してDBから垂線を下ろします(赤色の線)
③ その2線の交わる部位(青印)付近にMB2があるのではないかと疑います
④ その付近を低速回転のラウンドバーで慎重になぞります(非注水)
⑤ 削片がひっかかり白くなっている部分にMB2がある
という手順です。
穿孔症例
穿孔症例に対する対応はどうなのでしょうか。
穿孔部のリペアについてTropeらの論文を引用され、予後を左右する因子について解説がありました。
① リペアの時期が早いこと
② 穿孔部が深部にあること
③ 穿孔部のサイズが小さいこと
④ 感染がないこと
これらが予後の良い条件とのことでした。
穿孔部のサイズについては、近年の研究でサイズの大きさで予後が左右されないということも報告されており、穿孔部の確実な封鎖の方が大事であると述べられました。
穿孔部のリペアに使う材料としてMTAを用いる先生も多いのではないでしょうか。
穿孔部のリペアにMTAを用いた90歯を対象に行われたKurpp Cらの研究によると、成功率を有意に下げてしまう2つの条件があるそうです。
それは、穿孔部周囲の支持骨に術前から透過像が存在するケースと穿孔部とポケットが交通しているケースです。
これらのケースは別として条件が整っている場合、MTAによる穿孔部リペアの成功率は高く、2015年のSiew Kらのシステマティックレビューによると80.9%とのことでした。
おわりに
マイクロスコープの日本での普及台数は2017年の時点で7000台を超えました。
歯科医院が約7万件だと考えると単純計算で約10%の歯科医院はマイクロスコープを導入していることになります。
これからも導入率は増加する一方だと予想されます。
マイクロスコープはもはや必須で、複雑な病歴を持った難治性根尖性歯周炎に対しマイクロスコープを使用することは、リトリートメントの成功率を上げる重要なキーポイントとなるであろうと三橋先生は結ばれました。
三橋晃先生、本当にありがとうございました。
松浦 徹
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