【人気動画】総義歯専門Dr.が語るベーシックテクニック/松丸悠一先生 Part②
目次
精密印象採得
個人トレーは可動域を避けて作製します。
製作した個人トレーを試適してみて、トレー辺縁が軟組織の動きを妨げていないか確認します。
つづいて辺縁形成です。
今回は主にコンパウンドを用いた方法について解説をしていただきました。
「コンパウンドはとっつきにくい」というイメージを持たれている先生も多いかと思います。
松丸先生はコンパウンドの取り扱いのコツとして、熱軟化させる際にコンパウンド中央に芯を残して回転させながらゆっくりとトレーに巻き付けていくということを挙げられました。
コンパウンド使用のメリットのひとつとして、術者が診査によって床外形の完成形のイメージを持つことが出来ていれば、そのイメージに対して足りていない部分にコンパウンドの形態のコントロールをしやすい点があるとのことでした。
辺縁形成が十分か否かは辺縁形成材のフローで評価します。
丸みがあり、材料に動きがある場合はボーダーに達していると判断し、シャープで材料に動きがない場合はアンダーボーダーであると判断します。
咬合採得
咬合採得-咬合高径の決定
咬合高径の決定は
①下顎安静位
②顔貌計測法
③顔貌の観察
と進めていきます。
①下顎安静位
・測定前に確認する点
測定前に注意すべきこととして、測定基準面への意識があります。
測定する際に見る角度にばらつきがあると、測定ごとに咬合高径の数値が変わってしまいます。
一定の基準を持って測定することが重要とのことでした。
また、咬合高径の平均値を頭に入れておくこともポイントとして挙げられました。
平均値を知っておくと大きなエラーがあるとすぐに気づけますし、処置時間短縮にもつながりますね。
・測定のタイミング
やみくもに測定するとなかなか下顎安静位での咬合高径は正確に得られません。
正確な測定を行うためのポイントとして測定のタイミングについてのポイントを挙げられました。
✓力を抜いて閉口させ口唇が接触したタイミング
✓嚥下直後・洗口直後のタイミング
✓表情筋がリラックスしているタイミング
・機能を利用した確認法
機能を利用した確認法としてAir-blow法と発音法をご紹介されました。
ただしこれらの方法は、患者によっては変に力んでしまって数値がばらつくこともあるため、そのことを念頭に置いて行なう必要があるとのことでした。
②顔貌計測法
顔貌計測法としてWillis法とBruno法をご紹介されました。
これらは基本的に下顎安静位を利用して得た咬合高径の正確性を確認するために用いるものとのことでした。
③顔貌の観察
・咬合高径を低くしないためのチェックポイント
✓赤唇部の厚み
✓口裂の形
✓口角の状態
これらのチェックを行います。
赤唇の厚みについては上唇が特に咬合高径の影響を受けやすいとのことでした。
また、口裂がへの字になっている場合は咬合高径が低すぎることを示唆しているとのことでした。
・咬合高径を高くしないためのチェックポイント
✓Lip support
✓オトガイ部
✓口角下部
逆に高すぎる咬合高径にしないためにはこれらのチェックを行います。
高すぎる場合にはこれら周囲の筋が緊張します。
また、口を閉じてしばらくすると咬合高径が高い場合でも次第に筋がリラックスするため、筋の緊張を見るタイミングは閉口直後の状態とのことでした。
咬合採得-水平的顎位の決定
水平的顎位の決定においての注意点です。
有歯顎であれ無歯顎であれ、いわゆるゴシックアーチでのApexとタッピングポイントは一致しないケースがほとんどです。
そのため水平的顎位を決定するに当たっては、側方運動時の起点(Apex)とは分けて考えることが必要とのことでした。
また、Owen CPのMinimal Acceptable Protocolを引用され
✓患者自身による再現性がある
✓全臼歯による均等接触
✓筋や関節の不調和を生じない
という、適正な下顎位についての要件を得られるように努力することが必要とのことでした。
おわりに
総義歯作製の実際の流れに沿って、ベーシックな部分を詳しく解説していただきました。
臨床において総義歯に自信を持って取り組めていない先生も少なくはないのではないでしょうか。
総義歯専門で臨床を行われている松丸先生ならではの、豊富な知識と臨床経験に基づくご講演は明日からの臨床に生かせる内容ばかりでした。
スペシャル動画では実際の臨床での術式を動画で見ることもできます。
なかなか敬遠しがちなコンパウンドによる辺縁形成も動画で術式を見るとその操作法がかなりイメージしやすくなるかと思います。
是非スペシャル動画もご覧ください。
松丸先生、本当にありがとうございました。