「30 Under 30」2019プレミアムセミナー・Serendipity年間コース参加レポート
2019年11月10日「30 Under 30」2019プレミアムセミナーがベルサール新宿セントラルパークシティで行われました。
また、同月16、17日にはSerendipityの年間コース第4回がノーベルバイオケア・ジャパンで開催されました。
「30 Under 30」とは
詳しくはこちらをご覧ください。
→「30 Under 30」1期生卒業式/2期生入学式参加レポート
「30 Under 30」2019プレミアムセミナーの様子
まず、浦濱隼人代表理事によるオリエンテーションが行われました。
歯科医師としての志を高く持っていても、歯科のセミナーや年間コースはどうしても高額なものばかりで、そのことが学びの障壁となってしまうことがしばしばあります。
「教育が社会を変える」という信念をもとに「30 Under 30」は立ち上げられました。
そして、この会の考えに賛同した協賛クリニックや企業の出資により、「30 Under 30」では志高い若手歯科医師にさまざまな学びの機会を無料で提供しています。
新しい年間コース ―「WILL」―
また、現在実施されている年間コース第2期は「PASSION」「Serendipity」の2コースでしたが、来期からは加えて「WILL」というコースが開催されます。
「WILL」のコーディネーターを務める丹谷聖一先生がご登壇され、新しいコースについてのガイダンスを行いました。
「WILL」には「意思、遺言」という意味があります。
丹谷先生のクリニックに以前勤務されていた、ある若手歯科医師がいたそうです。
その先生の父親が急逝され、父親の歯科医院を急遽継ぐこととなり、その先生は丹谷先生のもとを去らなくてはならなくなりました。
丹谷先生は辞めていくその先生の背中を見ながら、これまで自分はこの先生に一体何をしてあげられたのか、伝えることができたのかと苦悩されたそうです。
そのときの経験と想いを今回の「WILL」というコースの名前と内容に集約したとのことでした。
きっとこのコースも素晴らしいものになると思います。
2期生発表
2期生を代表して2名の先生がご登壇され発表を行いました。
近藤威先生(Serendipityコース)と加藤駿祐先生(PASSIONコース)です。
近藤先生は歯科における日本の論文が世界的には影響力が小さいことなどを問題提起され、それらを解決するためのご自身のビジョンを示されました。
これからは「研究は大学、臨床は開業医」という垣根を破り、ともに協力し合うことで、実力のある臨床家が大学の協力を得ることにより自らの臨床をエビデンスとして示す論文を世界に発信できるようになると訴えられました。
近藤先生は大学に残ることで学生教育、臨床研修の充実化に尽力し、また「大学と臨床家との懸け橋」としての役割を担うことで、日本の歯科を世界トップレベルにしていきたいと話されました。
加藤先生は「人には誰にでも人生のどこかで自分を変えるきっかけや出会いがある」と述べられました。
加藤先生にとって「30 Under 30」のメンバーとして選ばれたことは、ご自身の人生に大きく影響を与えていると感じているそうです。
「30 Under 30」はそういったきっかけを若いうちに得られるいい機会で、そのきっかけや出会いが歯科医師というこれから自分が人生をかけていく仕事を、より楽しく、より刺激的なものにできると話されました。
熊谷先生ご登壇
NHKのテレビ番組「プロフェッショナル―仕事の流儀―」に出演されたことでも有名な熊谷崇先生がご講演をされました。
熊谷先生は天然永久歯すべてを残す「KEEP28」を目標に掲げ、臨床に取り組まれています。
予防歯科のイメージが強い熊谷先生ですが、治療をしっかり行えないのに予防はありえないと述べられたことは印象的でした。
また、起きてしまった疾患に対する後始末の治療のみを行うのではなく、その疾患が起きた原因に対する考察を行い、リスクマネジメントを行うことが再発を防ぐために重要であると述べられました。
また、「KEEP28」を実現するための具体策についても話されました。
まず「KEEP28」を実現することで口腔の健康から全身へ健康につながる価値を患者にしっかりと伝えます。
そして実現手段として「メディカルトリートメントモデル」「専門医との連携」「エビデンスに基づいた治療」「メインテナンス」「クラウドを利用した患者への情報開示、共有」を行います。
そのアウトカムをデータ収集解析し、結果を評価します。
3カ月に一度メインテナンスを受けている患者でも、1年365日の中のたった4日だけプロフェッショナルケアを受けている計算となります。
つまり、口腔内の健康維持のためには患者自身のホームケアが最重要であるため、患者のさまざまな口腔内情報についてクラウドを用いて患者と共有することにより、ホームケアの重要性を患者自身に認識させているとのことでした。
与五沢文夫先生ご登壇
矯正専門医で、日本にエッジワイズ法を広めた与五沢先生ですが、その人生観やご自身の豊富な症例についての解説をしていただきました。
補綴などの復元の医療よりも、クリエイティブな医療分野である矯正に魅力を感じたと矯正に傾倒された理由を話されました。
未発展だった日本の矯正歯科の草分け的存在として現在の矯正臨床の礎を築かれました。
自身のフィロソフィーから導き出された多数の症例は、矯正がクリエイティブな仕事であることを自ら体現されたものであると感じられました。
山﨑長郎先生ご登壇
「30 Under 30」の総監修である山﨑長郎先生が最後にご登壇されました。
これまでのご自身の学習曲線を示され、山﨑先生ですら決して順調な学習曲線を描かれてきたわけではないことを示されました。
ある程度成長すると慢心が生まれ成長が鈍るため、情熱を持ち続け継続的に進歩していくことの難しさとその重要性を訴えられました。
日本のトップ100の臨床家は、世界のトップ100として渡り合えるレベルであると述べられ、世界に目を向けた生き方についてご自身の経験を話されました。
パネルディスカッションとフィナーレ
Serendipity年間コース第4回の様子
Penn Endo Study Club in Japanを主宰されており、日本の歯内療法をリードされている石井先生が結果の良い歯内療法を行うために必要なことについて話されました。
まず、日本の歯内療法の成功率についてです。
日本の抜髄処置の成功率は50%前後と低いものとなっています。
抜髄処置の成功率は本来約90%と言われていますが、原理原則に基づかない治療では成功率がかなり落ちてしまいます。
マイクロスコープやニッケルチタンロータリーファイルなどの最新の機材に飛びつくよりも、ラバーダムをはじめとした無菌的治療の原則に則った治療を行うことが最重要であると石井先生は話されました。
ラバーダム以外にも、世界基準の歯内療法のプロトコールについてステップごとに詳しく解説していただきました。
バイオセラミックス系シーラーなど新しい材料についても話をされ、いずれも豊富なエビデンスに基づく講義で、自らの臨床を見直す機会となりました。
インストラクターを務めてくださった石井先生、会場をご提供していただいたノーベルバイオケア・ジャパンの皆様、そしてこの機会をご提供していただいた「30 Under 30」浦濱隼人代表理事をはじめスタッフの皆様、協賛企業・クリニックの先生方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。