【連載】新しい世代のボンディング材が拡げる臨床 #03 ~ボンドタイプの最強の知覚過敏抑制材 ~
1.知覚過敏抑制材としてのSBU
スコッチボンドTM ユニバーサル アドヒーシブ(SBU)は,被着面を選ばない1 液・セルフエッチングタイプの多目的歯科用接着材(図1)であり,マルチなプレーヤーであることはこれまでの記事からすでに理解されていると思う.
本製品のマルチぶりの一つとして,本シリーズ最後のトピックでは,光硬化型歯科用知覚過敏抑制材料(保険算定可)としてのSBU を紹介する.
図1 スコッチボンド ユニバーサル アドヒーシブ 象牙質知覚過敏症にも使える(保険算定可)マルチプレーヤーアドヒーシブ
2.作用機序
SBU が強固に象牙質に接着し,ボンディングレジンの「蓋」が「象牙細管を封鎖」することが主な作用機序である(※1).また,リン酸モノマーと歯質のカルシウム成分との反応生成物も細管を封鎖すると考えられており,高分子材料と化学的反応物の双方の物理的封鎖により知覚過敏を抑制する.
3.特長と適応症例
SBU がボンドタイプの最強の知覚過敏抑制材と言われる所以は,①水分のコントロールが多少困難な部位でも安定した接着性能を発揮できる「ビトラボンドコポリマー」と,②歯質接着性に定評のある「MDP モノマー」のダブル配合で,特に歯頚部や根面など歯肉に近い部位(Case 1)や,下顎舌側部など湿度のコントロールが難しい部位の象牙質にもSBUが確実に浸透・拡散するので,安心して適用できることである.
【Case1】歯頚部知覚過敏抑制処置
1-1 術前.│2 歯頚部のプラーク停滞が病因と思われる知覚過敏.欠損はほとんどなく,審美性が要求されるため,無色透明の薄膜であるSBU でコーティングすることにした
1-2 知覚過敏部位の清浄化.プラーク除去,滲出液などタンパク除去は必須である1).温湿綿球で清拭後,乾綿球で余分な水分を除去する
1-3 知覚過敏部位の水分のコントロール.冷水敏が強くエアが使用できない場合は,小乾綿球を数個使い,歯肉溝の水分までしっかりと拭うようにする
1-4 SBU 塗布.簡易防湿後,塗布直前に用意したSBU を3 〜4 回繰り返し塗布し,常にたっぷりの量の新鮮な液が歯面に当るようにする(延べ塗布時間約20 秒)(※2)
1-5 SBU 乾燥.含有アルコールや水分,あるいは歯肉溝に貯留したSBU をエアブローにより除去(乾綿球による薄層化は不可)する2).ほとんどの場合,エア痛は軽減されている
1-6 光照射.歯肉溝にボンド液が貯留していないことを確認後,光照射する.歯肉溝や歯肉に溢出したバリは不快であり,患者が爪で剥がしたりするので注意
1-7 未重合除去.硬く絞ったアルコール小綿球で拭い,未重合層を除去する.未重合層を残すと,着色やプラーク付着の原因となる
1-8 術後.乾小綿球で表面を擦り滑沢にする.「ビトラボンドコポリマー」と「MDP モノマー」のダブル配合により,水分のコントロールが難しい部位でも安定した接着性能が発揮できる
また,③無色透明で,④エアブローで容易に薄層化(被膜厚さは5 ~ 10μm)でき,⑤ナノフィラー含有により耐摩耗性に優れているので,実質欠損がわずかで審美性の要求される歯頚部や根面部,あるいは切端や咬合面等で咬合に関与していない部位(Case 2)に最適であり,歯肉溝に溜まった余剰な液成分も容易に吹き飛ばせるため安心して使用できる.
【Case2】切縁破折部知覚過敏抑制処置
2-1 術前.1│ 近心切縁隅角破折による知覚過敏.レジン修復には欠損が小さいため,強固な薄層であるSBU でコーテイングすることにした
2-2 知覚過敏部位の清浄化.音波ブラシ(ソニックフレックス クリーン,Kavo)による知覚過敏部位の清浄化.しみる場合は,温湿綿球で拭い,乾綿球で余分な水分を除去しておく
2-3 SBU 塗布.隣在歯をマトリックス等で保護した後,SBU を3 〜4 度塗布(延べ塗布時間約20 秒)し,弱圧〜強圧のエアブローで薄層化する(※2)
2-4 術後.硬く絞ったアルコール綿球で未重合層を拭う.無色透明,薄膜(5 〜10μm),耐摩耗性(ナノフィラー含有)などの性質を有するSBUだからこそできる治療法である
さらにSBU は,⑥遮光下では30 分使用可能なので,複数歯に同時に発生した知覚過敏部位に対し1回の滴下で便利に使用できる.
4.使用上のポイント
「知覚過敏抑制治療,これだけは外せない! 5か条!(※1)を確実(に行った後,「確実な接着のための五か条」(※2)に従って,たっぷりのSBU を20 秒間塗布し,的確なエアブロー後,光照射を10 秒間と非常に簡易である.
文献
(※1)冨士谷盛興,千田 彰 編著.象牙質知覚過敏症 目からウロコのパーフェクト治療ガイド.第2 版.医歯薬出版,2013;2-8,26-27,45.
(※2)http://www.mmm.co.jp/hc/dental/pro/clinical_hint/17.html(2013 年9 月1 日アクセス)
冨士谷 盛興(Morioki Fujitani) 千田 彰(Akira Senda)
愛知学院大学歯学部保存修復学講座
歯界展望 Vol. 122 No. 5 2013―11
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