【連載】新しい世代のボンディング材が拡げる臨床 #02 ~臼歯部Ⅱ級窩洞症例における直接コンポジットレジン充填~
1.はじめに
歯質の欠損が小規模に限定している齲蝕症例を対象にした治療方針は,間接法と直接法に大別される.間接法においては,金属またはセラミックスなどを用いたインレー修復があげられ,一方直接法においては,コンポジットレジン(以下,CR)やその他の材料を用いた直接充填法が一般的に認知されているだろう.
筆者は小規模の齲蝕症例を対象とした治療選択肢のなかでは,光重合型CR を使用した直接CR 充填が最も機能的に優れていると考えている.
優れた機能性を支える基盤となっている科学技術の一つに,歯質に対する確実な接着技術があげられる.
本稿では,比較的小規模な臼歯部Ⅱ級窩洞症例における,新規ボンディング材「スコッチボンドTMユニバーサル アドヒーシブ」(図1)を用いた直接CR充填の術式を解説する.
図1 スコッチボンドTM ユニバーサルアドヒーシブ ユニドースタイプ.
3M によれば,新規デザインのボトルの機能は卓抜とのことだが,筆者は繊細な組成のボンディング材であることから,ユニドースタイプを好んでいる
2.臼歯部Ⅱ級直接CR充填
患歯は 6│ で,遠心隣接面に比較的小規模な齲蝕を認める(1-1).頬面溝にも小さなエナメル欠損を確認し,咬合面には劣化したCR 充填を認める.この程度の小規模の歯質欠損であれば,直接CR 充填が最良の機能的治療結果を導くであろう.ただし,一定水準の接着技術・充填技術・重合技術は必須である.
麻酔後,ラバーダム防湿を行い(1-2),窩洞形成を完了する.マージン付近のエナメル質をリン酸(スコッチボンドTM ユニバーサル エッチャント)にて約15 秒エッチングし,水洗・乾燥を行った後(1-3),隔壁・ウェッジ・リテーナーリングの設置を行い(1-4),ボンディング操作へ移行する.ボンディング材はスコッチボンドTM ユニバーサル アドヒーシブ ユニドースタイプ(3M,図1)を選択した.
1-1 6│ の遠心隣接面に齲蝕が認められる(鏡像).咬合面には劣化したCR 充填が認められる
1-2 局所麻酔後,ラバーダム防湿を行い,プレパレーションに移行する
1-3 マージン付近のエナメル質をスコッチボンドTM ユニバーサル エッチャント シリンジにてエッチング・水洗・乾燥を行う
1-4 トランスルーセントタイプのマトリックスを用いて,隔壁を設置.ボンディングに移行する
同製品は新規に MDP,Silane を配合したことで,ワンステップでありながら,歯質・メタル・セラミックス・コンポジットレジンに対して安定した接着力を発揮する現在唯一のボンディング材となっている.臨床的には破折歯冠修復物などの修理症例において,ワンステップである簡便性から優位性が強く示されることになるが,直接CR 充填においても安定した接着力が期待されるだろう.
ボンディング処理においては,十分な量のボンディング材を歯質に塗布するよう留意する.エアブロー後,光重合を行い,フロアブルレジン(フィルテックTMシュープリーム ウルトラフロー コンポジットレジンA3.5) にてライニング後, フィルテックTMシュープリーム XTE コンポジットレジンにて充填を完了し,仕上げ研磨を行った(1-5 ~ 1-7).6 カ月後の状況も安定した様相を示している(1-8).
1-5 ボンディング処理終了後,フィルテックTM シュープリーム ウルトラフロー コンポジットレジンA3.5にてライニング・隣接面充填を行う
1-6 次いで,咬合面をフィルテックTMシュープリーム XTE コンポジットレジンのA1E にて充填・光重合を行う
1-7 研磨・艶出しを行ったところ.ラバーダムを撤去後,咬合を確認する
1-8 6 カ月後の状態.良好な状態を示している
3.まとめ
臼歯直接CR 充填の予後は,残存歯質量に依存するところが大きい.歯質の欠損が大きくなれば,間接法アンレー修復などを検討する必要がある.適応
症であれば,確実なボンディングシステムを選択し,丁寧なボンディング処理を行うことで,最良の臨床的結果を導きだすことができるだろう.
高橋 登(Noboru Takahashi)
東京都・タカハシデンタルオフィス
歯界展望 Vol. 122 No. 4 2013―10
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