第14回:次世代の歯科医師に贈る、ジェネラリスト育成講座《内山徹哉先生》
はじめに
今回は咬合再構成やベニア修復のポイント、Anterior Guidanceの重要性についてのプレゼンテーションです。
アメリカで脚光を浴びているSleep dentistryについてもお話しいただいています。
Part1:Occlusal reconstruction
Part2:審美領域における術前診査チェックポイント
Part3:Prep guide
Part4:ベニア修復の接着
Part5:症例Anterior Guidance付与
Part6:SpO2 Pulseと咬合の関係
Part7:インプラントの近遠心的距離
Part1 Occlusal reconstruction
包括的歯科治療を行うにはまずステップを踏む必要があります。
いきなり包括的な症例から手をつけるのではなく、少数歯のクラウン・ブリッジやインプラントの症例から始め、自信をつけてから包括的な症例へとステップアップしていきます。
また、それぞれの患者さんの治療計画を立案するときに常に包括的な視点でベストチョイスを考える習慣をつけておくことが大事だと内山先生は述べられました。
実際には患者さんの時間的、費用的な制約があることが多かったりします。
ただ、そういった制約がなく「先生の思う一番いい治療でお願いします」と言われたときに自分自身が戸惑ってしまいたくないですよね。
常にベストチョイスを用意する習慣をつけておくことが、包括的な治療計画立案のいいトレーニングになります。
Part2 審美領域における術前診査チェックポイント
ここでは審美領域における術前診査のチェックポイントとベニアについて解説していただきました。
ベニアにおいてはラボで予想支台歯に対するプロビジョナルを先に製作しておくことを内山先生はお勧めされました。
これは時間効率の点と、支台歯形成のイメージが湧きやすくなる点で有効とのことでした。
Part3 Prep guide
矮小歯に対するベニア修復について症例を通じて解説していただきました。
ベニア形成は非常に難しいです。
そのためPrep guideを用意しておくことを推奨されました。
ベニアのプロビジョナルの扱いについても詳しく解説していただきました。
仮着の際も部分的にエッチングしたり、透明な仮着材を使ったりなどの工夫が必要となります。
Part4 ベニア修復の接着
内山先生はベニア修復ではほとんどの場合、emaxを選択されるとのことでした。
ラボサイドでフッ酸処理をし、接着力を強固なものにしていきます。
口腔内でもラバーダム防湿をはじめとした、よりよい接着を得るためのメソッドを詳しく解説していただきました。
術前と術後3年経過時の比較です。
実際には、矮小歯以外の問題も包括的に解決されており、診査・診断から治療計画立案などのステップを詳しく解説していただいています。
Part5 症例 Anterior Guidance付与
ベニアの形成の際はPrep Guideを用います。
Prep Guideの使い方をはじめ、ベニア形成におけるポイントについてお話しいただきました。
また、Anterior Guidanceの重要性についてもお話しいただきました。
グラインディング時に大臼歯部に接触があると咀嚼筋活動が上昇し、強力なブラキシズムになるという2008年の佐藤らの論文を引用し、側方運動時には犬歯でガイドさせ、臼歯を離開させることを念頭におくべきだと述べられました。
また、臼歯の咬頭展開角はAnterior Guidanceに依存するため、修復の際はそれらの調和を考慮する必要があります。
Part6 SpO2 Pulseと咬合の関係
アメリカ歯科界で最近のトピックスのひとつとなっているSleep dentistryについても言及されました。
内山先生もOcclusal appliance装着前後での就寝時のSpO2と脈拍の変化を観察するということを実際に行っているそうです。
どのような症例に対してどういったOcclusal applianceを装着したか、その結果起こった変化についても解説していただきました。
このような患者さんが審美性の改善を主訴に来院されたらどうしますか?
下顎右側中切歯は先天欠如しています。
また、上顎右側第一大臼歯はAnterior Guidanceの欠如により強い咬合干渉にさらされ歯根破折していました。
内山先生は主訴である審美改善はもちろんですが、Anterior Guidanceの欠如を解決し、安定した咬合を獲得する治療計画を立てられました。
Part7 インプラントの近遠心的距離
インプラント埋伏位置のルールについてです。
インプラントの近遠心な埋入位置は天然歯から約2㎜離す必要があるなど、いくつかの原則とその理由についてお話しいただきました。
先ほどのPart6の最後の症例のつづきです。
矯正により下顎右側側切歯部にスペースをつくりインプラントを埋入していきます。
近遠心的、そして唇舌側的にもギリギリのスペースしかなく、かなりシビアな状態です。
埋入後の口腔内写真です。
下顎前歯部などインプラントの近遠心的距離に余裕がない場合は歯間乳頭がロスしてくるリスクがあります。
このため、今回は下顎右側中切歯が先天欠如でしたが、下顎右側側切歯部にスペースをつくりこちらにインプラントを埋入することで、歯間乳頭がロスしても審美性に悪影響が出にくいようにしています。
また、埋入位置もほんのわずかに遠心よりにすることによって、審美的に問題になりやすい近心歯間乳頭の温存を図っています。
治療前後の口腔内写真です。
患者さんの主訴である審美改善はもちろんですが、Anterior Guidanceを付与し、安定した咬合を獲得できています。
これは単なる難しいインプラント埋入症例というわけでなく、実は全顎的な診査・診断から導き出された治療の一場面に過ぎません。
包括的歯科治療を行うにあたっては、まず顎顔面を見据えた治療計画を立て、そこから歯列、そして一歯ごとの治療へ落とし込んでいきます。
次回はMaxillo Facial Analysisの重要性についてお話しいただきます。